オンエア

創作文芸ブログ

第八回  

「阪急電車」/有川浩
☆幻冬舎文庫


ガタンゴトン。
毎日変わらなく電車は動き続ける。
ガタンゴトンガタンゴトン。
そんな電車の中で日々何かが生まれてもおかしくないのかもしれない。
社内から見下ろす川、孫と犬と少し遠くへ散歩、彼氏への本当の想い、信じていた絆の脆さを体験したり。様々なことが同じ路線内で起こって、回って、繋がる。
人とひととの繋がりは何処で始まるか想像もつかないのだ。

そしてまた、阪急電車は走り出す。



有川浩といえば図書館戦争。代表作で大ヒットセラーの作品が目立つのだが、彼女はこういった静かな話も書く。そして私は彼女のこういった作品が凄く好きである。波自体はそこまで大きいものではないのに、魅せるものがそこにある。
阪急電車とは大阪で通っている実際の路線のこと。この作品を読んだ人は阪急電車参りというものをするそうだ。そして私もいつか阪急電車参りをしてみたいと考えている一人である。
そこまで人を魅了する人間ドラマがこの一冊にまとまっている。是非とも息抜きに、有川ワールドに触れてみては如何だろうか。

category: オススメ図書

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第七回  

「失はれる物語」/乙一
☆新潮文庫


もし存在しないはずの、在りもしない頭の中の携帯電話が鳴りだしたら?

それは、喜びと楽しみと悲しみの始まり。


友達を作れない子。
だけど友達を存在させることはできる。そんな彼女はみんなが持ってる携帯電話が欲しかった。
買ったとしてもアドレス帳に友達の名前はない。
それならば作ってしまえばいい。
頭の中でなら他人に迷惑かけることも、お金の心配もいらない。とても便利だった。

かかることも、かけることも出来ない携帯電話を毎日眺めては手のひらに乗せて感触を楽しんだ。
いつも通り携帯電話で遊んでいた。何も変わらなかった。ただ、頭の中で造り上げた携帯電話が鳴り始めた。
Calling you




何本か短編が集まった短編集。いきなり黒乙一(と自分は呼んでいる。主にGOTHとかの乙一を指す)に触れるより軽く、そしてグッと感動させられる。気軽に物語を楽しみたい人向けかと思われる。

この物語を通じて感じたことは、ニンゲンという生物は何かしらの人物と関わって生きるしかないのだと。誰とも関わらず、ひとりだけの空間で生きてはゆけないのだと。
当たり前のことだと言われるかもしれないが、孤独というものをはヒトと触れ合って生きてきたから言える言葉なのだろう。そう、痛感させられた。

哀しくも、甘い、優しいトゲがそこらじゅうにちりばめられている。乙一らしい世界に、そっと涙をながした。


トゲに触れて、痛みを全身で感じて欲しい。

category: オススメ図書

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第六回  

「GO!ヒロミGO!」シリーズ全8巻/麻生みこと
☆花とゆめCOMICS


勉強出来て美人で、スタイル良くて目立って…。
アタシはこの為にT大へやってきた!!

超難関大に入学した羽柴ヒロミ。その志願理由は「東京でイイ女になる!!」こと。
入学してからは、合コンに誘われまくりの行きまくり!とにかくモテたい!!

ところが、ある日、ガリ勉時代を知る同じ予備校だったヒデキが居て…。
アイツもT大だったのか…!!
逃げるヒロミに興味本位で追うヒデキ。そしてなんかデカいの(ゴロー)。
追いかけてくんなーっ!

ヒロミが周りを巻き込んで事を大きくしていく、そんなドタバタがっちゃんがっちゃんなラブ(?)コメディー。


この作品はとにかくスピードがある。ヒロミが周りを巻き込んで疲れさせるだけ(本当にそれだけ)、という所からして一風変わった作品ではないかと思う。
最初に描かれたのが90年代なので少々画風に抵抗があるかもしれないが、今の少女漫画では味わえないものがり、考えがある。
今の少女漫画の様にラブを求める作品ではなく、友情や学生の心情、人との係わりを求める物語。けど、ドタバタしたコメディー調で少し解りづらいのかもしれない。

新品では既に増刷を中止しているので、興味のある方は古本屋で探すことをオススメしたい。是非読んで!!

category: オススメ図書

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第五回  

「No.6」シリーズ/あさのあつこ
☆講談社


何もかも恵まれていると、欠けているものに惹かれるのか…。
最高ランクの頭脳の持ち主とされた少年紫苑。彼は12歳の誕生日を迎えようとしていた。しかしそこである少年と出会うことになる。少年はネズミという。

その出会いは始まりであり、終わりでもあった。

何もかも管理されている理想郷No.6。紫苑はそこに住んでいた。何不自由なく、快適な生活に思えたNo.6での暮らし。しかし、それは生きた心地のしない空虚な幻想にも思えた。
紫苑はある罪を犯し、最高ランクの住居から最低ランクまで落とされる。だが、そこでの暮らしは貧しいながらも楽しく、そして生きている感覚を味わえた。
これで良かったんだ、と思い始めた時、彼はやってきた。

あの出会いは果たして運命なのか必然なのか偶然なのか…。
ネズミが現われてから紫苑の全てが変わり始める。それは、体験したことのないような感覚だった。

「ネズミ、君についていく」


紫苑はとてもきれいだ。暖かく、やわらかい、善人を形にしたような人物。良く言えばピュア、悪く言えば世間知らず。
しかしそれは、ネズミにとっては役立たずなのかもしれない。
だが、ネズミは紫苑を見捨てない。何故だかは自分でもわらないそうだ。

この作品は近未来を書いた作品なのではないかと思う時がある。
人々はみな管理され、シリアルナンバーの元で生きて行く。一人の人物ではなく、ひとつの固体。無機物となんの変わりもなくなってしまうのではないだろうか。No.6の様な理想郷と呼ばれるであろう街が近い未来、何処かに出来上がっているのかもしれない。有り得ない話でもないのだ。
そんな中で、人間臭い人間が居たらどうなるのだろう。生きている心地を求め走る少年が居たら…。
紫苑はある意味、自分の生きる意味を探しているのではないか。ネズミに会い、日々を共にし、新たな知識を得て、生きる術を見出す。それが目的なのではと…。
考え過ぎなのかもしれない。ただの妄想に違いないのだが、それ程考えさせられて、様々な感情が渦巻く作品だと感じた。
薄い本なので簡単に読み終わってしまう。だけど薄いだけじゃない、何かがある本。是非とも一度手に取って読んでいただきたい。

category: オススメ図書

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第四回  

「重力ピエロ」/伊坂幸太郎
☆新潮文庫


春が二階から落ちてきた。

仙台のとある街で起こった放火事件。
その近くで遺伝子会社に勤める男、泉。彼はその事件にひょんなことから関わることになってしまった。そのきっかけとなったのが、泉の弟の春。二階から落ちてきたのは彼である。

放火と言ってもそれ程大きいものではない。ボヤ程度。
だが、何か引っ掛かる。
そんな時、春が意味深な留守電を残した。

「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない」

春はこの事件の何を知っているのか。


この作品は伊坂に出会うきっかけとなった作品。映画のCMを見て買ったものだ。
硬い様で柔らかい伊坂の文。泉の視点で繰り広げられる世界はどんどん引き込まれていく。読み進める手を止められなかった。

ミステリーというジャンルだが、家族愛を描いた心温まるストーリー、という括りにも分類されるかもしれない。
一度、手に取って読んでいただきたい作品だ。

category: オススメ図書

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第三回  

「チーム・バチスタの栄光」/海堂尊
☆宝島社


ある大学病院で患者の不平不満を聞く場所があった。不定愁訴外来、通称愚痴外来。その外来の主、田口公平は聞き上手な神経内科医。ちなみに血は大の苦手で、見るだけで貧血を起こす程。
いつもと変わらないはずの月曜になるつもりだった、そんなある日。色々な歯車が動き出した。

何で俺がこんな目にあってるんだよ…!!

東城医大切っての心臓外科チーム。バチスタ手術という成功率通常30%の難しい手術を60%という驚異的な数字をたたき出してきた、チーム・バチスタ。
そのチームが起こした不可解な連続死。それは何を表すのか。
田口は医院長命令でそのチーム、グロリアス・セブン(栄光の七人)の調査を行なうことになる。
これは術死なのか、単なる偶然なのか、それとも悪意の仕業なのか…。
田口は強力な助っ人(?)と、その問題をどう捉えるのか。チーム・バチスタらどうなるのか…。
現代医学を描く本格ミステリー。


映画、ドラマ、漫画、ゲームといった幅広い分野にてこの作品が取り扱われてきた。自分はドラマから入ったのだが、どの作品も原作と違った面白さがあり、どの分野から入っても支障はない。ただ、なるべくなら原作から入るのをおすすめする。

原作者は現役の非常勤務医である。デビューしてから三年で、10作以上もの作品を驚異的なスピードで世に出してきた。
年代は違えどどの作品も関連性があり、登場人物も被る。10作もの作品を合わせてひとつの街をテーマとして描かれているのだ。

この作品は所謂、田口・白鳥コンビシリーズ。三作目となる、「ジェネラル・ルージュの凱旋」も映画化され、割りと名が知れているのではないかと思う。
このシリーズは東城医大という大学病院を軸に様々な事件が起こる(起こらされる?)という作品。万年窓際講師の田口を巻き込みながら、ドタバタと物語りは進んでいく。とてもリズミカルで、テンポよく読み進められるのではないか、と思う。
是非とも文庫版からお手に取って読んでいただきたい作品である。

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第二回  

「ダレン・シャン」シリーズ/ダレン・シャン
☆小学館

(※文庫版も出ていますが、自分はハードカバーの方が好きなので、こちらを紹介させていただきます)


普通の、何処にでもいる少年、ダレン・シャン。
ただ、ひとつだけみんなとは違うものがあった。それは、大のクモ好きだということ!
小さい頃から庭先などに居たクモを連れ帰っては、自分の部屋で飼っていた。それくらいクモが大好きなのだ!
そんなダレンに、両親は毒抜きのタランチュラを買ってきてくれた。ダレンは大喜びだった。
ところがある日、当時人気だったアニメを真似して、タランチュラを掃除機で吸ってしまう。当然、掃除機の中で生きてる訳がなく、タランチュラは死んでしまった。

何故こんな話をするかというと、物語りがこうやって始まるからだ。

「これから話すことはひとつ残らず、本当に起きたことだと信じてほしいからだ」


こんな始まり方をする本があるだろうか。
当時の私はこんな始まり方があるなんて、知らなかった。とうよりも、本を読むのも初めてだったのだ。知る筈もない。
だが、本を読むことを覚えた今でも、こんな始まり方をする本は知らない。
衝撃的、というのはこういうことなのだろう。


物語りはごく普通なファンタジー。小学生向けの書き方で、読み易い。
読書をしない方でも、読み進められるのではないか、と思う。

今年の末に米国での実写映画が放映開始される予定。
また、日本での放映は決まってません。もし、日本で放映するとしたら来年の始め頃だそうです。
今ならまだ間に合う!原作を読んで映画も楽しみましょう!

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第一回  

「ガールズ・ブルー」「ガールズ・ブルーⅡ」/あさのあつこ
☆文春文庫又はピュアフル文庫

理穂という日本全国、何処にでもいるような元気な女の子の周りを描いた青春ストーリー。
青春ストーリー、というには何もハプニングや事件は起きないんだけれど、きらきらしてて、「今」を生きている理穂を間近に感じられる一冊。

一作目は理穂が高校二年生の時のお話。
幼馴染みの美咲や如月、スウちゃんと一緒に、いつも通りの理穂の日常を描く所から物語りは始まる。


何も事件という事件は起きない、普通の日常を描いているのに、どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろう。これは毎回読み終わると感じるものだ。
「今」という時間を生き、17歳の今を理穂は愛している。ただそれだけ。生き生きとした女子高生を描いただけで、これほどの感情を得られるのはこの作品だけだと思う。実際、これを越える青春ストーリーを読んだことはない。

作中の季節が夏だからか、私は毎年夏にこの作品を読み返す。その度、理穂たちは新たな一面を見せてくれる。
この作品は、言葉というものに表すより、感情で受け取るもの、だとここ最近思う。故に毎年違った面白さがあるんだろう。
大好きな作品だ。

一度でも良い。手に取って読んでいただきたい。

category: オススメ図書

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第零回  

わたしの好きな本、みなさんに是非読んで欲しい本を紹介させていただくコーナーみたいなそんな感じ。
小説だけにとどまらず、漫画なども紹介できていけたらなあ、と思っています。
これはふと思いついたらやるのでかなり更新低め。

以下、表示形式の例です。

「本のタイトル」/作家名
☆出版社

以下阿沙紀のコメント

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